働くシニア応援サイト

見つけた!いきいき停年ライフ(彩の国だより 平成30年3月)

2018年3月12日

三遊亭鬼丸さん

彩の国シニア応援大使の落語家、三遊亭鬼丸です。突撃取材の2回目は「経験を生かす=輝き」がテーマ。
培った知識や技能、楽しみながら続けてきた趣味など、これまでの人生の経験を今の輝きにつなげているシニアの皆さんです。始めることに足踏みしているあなた、難しく考えることはありません。経験を生かせる仕事や活動が身近にあります。

  • 大福茶屋さわた
  • ぎょうだ足袋蔵ネットワーク
  • さいたま映像ボランティアの会
  • 傾聴ボランティアあゆみ
  • ㈱愛工舎製作所
  • めぬま観光ガイドボランティア「阿うんの会」

おもてなしの心

大福茶屋さわた

熊谷市妻沼めぬま聖天様しょうでんさま近く、縁結び通りに「大福茶屋さわた」はあります。10年ほど前に、和洋菓子を製造販売する㈱沢田さわた本店が開店したお店です。築120年の蔵造りを改装した、どこか懐かしい田舎のおばあちゃんの家のような雰囲気です。

須永秀子さんは70歳。社内最年長で、3年前に店長を任されました。「ハイカラなのもいいが、地域に根付いたお店にしたい」と、孫のような若い人に采配さいはいを振るっています。

妻沼生まれの妻沼育ち。実家は商家だったそうです。若い世代に伝えたいのは、どうやら商いの心や働く意味のようです。

「休んでいって」この日は、店をのぞく人に声を掛け、甘酒を無料で振る舞っていました。これは「お福分け」といって、特別なサービスではないそうです。

「ここは縁側でお茶飲みするような場だから、福を分ける気持ちで毎日お菓子などを手作りする。商売はその先。また来ていただけることに感謝して働かないと」

おもてなしの心を「自分の背中で示したい」と須永さん。接客している姿がとても素敵でした。

大福茶屋さわた

近所の人との交流の場にもなっている

大福茶屋さわた

熟練の技

ぎょうだ足袋蔵ネットワーク

行田は足袋のまち。今もあちこちに「足袋蔵」が残っています。NPO法人ぎょうだ足袋蔵ネットワークは、足袋蔵を保存し、まちづくりに生かす活動をしています。足袋産業が全盛だった昭和初期の工場の様子を再現した「足袋とくらしの博物館」も運営し、熟練の 職人が製造する様子を見学できます。

中島栄作さん(82)は今も現役の足袋職人です。市内の衣料製造会社で働く傍ら、博物館で実演もしています。

「働くことは生きる張り。博物館は工場とは違ってお客さんと向き合えるから面白い。いくらか愛想も言えるようになった」
もう一人の職人、島崎忠樹しまざきただきさん(82)も博物館の開館日にミシンを踏んでいます。

「今は働く喜びが違う。時々届く礼状はとてもうれしい。昔は職人が個人のお客さんとつながることはなかったから」

博物館に近い足袋蔵まちづくりミュージアムで、ガイドをしている小境こざかい久美子さん(66)、関田英子せきたえいこさん(63)、伊藤美雪さん(66)、宮嵜叔久みやざきとしひささん(80)に活動のきっかけを聞きました。不思議なことに「たまたま誘われて」と4人は口をそろえます。

ひょっとして足袋の神様のお導き?きっと足袋のまちが大好きだからですね。

ぎょうだ足袋蔵ネットワーク

履き心地が変わる仕上げの作業

ぎょうだ足袋蔵ネットワーク

次世代とのふれあい

さいたま映像ボランティアの会

川口市のSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ映像ミュージアムでは、NPO法人さいたま映像ボランティアの会(川口市)が館内のガイドなどを行っています。会の活動分野は幅広く、「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」の主催にも名を連ねます。1000人を超えるボランティアの日程などを管理するのが事務局長の浅見洋子あさみようこさん(67)です。

「毎年新人を募集する。年代は幅広いが生き生きしているのは皆同じ。子供の目の輝きやお客様の感謝に出会えることが大きな喜びになっている」

活動には専門的な知識や技術が求められる分野もあります。菅原襄すがわらのぼるさん(74)はこう話します。

「元々音響や映像機器の操作が趣味で、その知識を生かせるかなと、気軽に入会した。今は生きる張りになっている」

落語研究会出身という林芳男よしおさん(68)は、人前で話す経験が活動に生きているとか。

「他の団体の仲間は同世代が多いが、ここには世代を超えた仲間がいる。子供たちとの触れ合いも大きな励み」

活動分野の幅広さや規模には驚きましたが、参加の動機は意外に身近な趣味や経験とつながっているのですね。

さいたま映像ボランティアの会

子供たちに映像の楽しさを紹介

さいたま映像ボランティアの会

ゆたかな経験

傾聴ボランティアあゆみ

さいたま市にある特別養護老人ホーム「ひかわ」を訪ねると、入所者のおばあちゃん3人がリビングで迎えてくれました。隣に座って声を掛けます。

「お話を聞かせていただいてよろしいですか」 傾聴ボランティアあゆみ(さいたま市)の代表、久保博司さん(75)に、こう教わりました。

「たとえ、話をしなくても、そばにいることが癒やしになる。
笑顔を見るのが、活動の喜び」
登録ボランティアは、シニアの男女約350人。高齢者施設や個人宅を定期的に訪れています。前田誠治まえだせいじさん(72)はこう話します。

「相手は人生経験が豊富。大切なのは相手を尊重することで、聴くことに徹している」
落語家はしゃべって楽しませる仕事。話をじっくり聴き、相手に共感するのは案外難しく、聴く側である私の人生経験が問われているようでした。傾聴に公的な資格はありませんが、会には外部の専門講師による養成講座があります。年齢を重ねたシニアにこそふさわしい活動だと思いました。

別れ際、名残惜しそうに手を伸ばすおばあちゃん。握った手の温もりに出会いの喜びを感じて、活動を続ける気持ちが分かった気がしました。

傾聴ボランティアあゆみ

実際に傾聴を体験

傾聴ボランティアあゆみ

ものづくりへの情熱

㈱愛工舎製作所

製菓・製パン業務用ミキサーのリーディングカンパニーである愛工舎製作所(戸田市)は、シニア雇用に積極的です。昨年10月には再雇用制度の上限年齢を70歳へ引き上げ、さらに意欲があれば70歳以上でも積極的に再雇用するそうです。代表取締役会長の牛窪啓詞けいじさん(72)は力を込めて話します。

「就労人口が減少する中で、ベテラン社員を簡単に手放すなんてもったいない。能力は年齢には関係ない。仕事は情熱とやる気。経験は買えない」

橘良信さん( 72)は、20代の若者と一緒に働いています。仕事はお客さまが使う機械のメンテナンス。中には昔、自分が作ったものもあり、知識と経験が役立つとか。それらを若手へ伝えています。
「仕事を続けるのは自分の意志。ここではリタイアする時期も自分で決められる。元気で長く働きたい」

永松二郎さん(66)は長く設計畑を歩いてきました。大学の同級生に聞くと、定年後も8割は働いていると言います。

「好きな仕事を続けられている人はわずか。私はものづくりが好き。本当に恵まれていると思う」

好きだから続ける、という選択は、経験を積んだシニアらしい働き方。私には落語がまさにそれ。大いに共感しました。

㈱愛工舎製作所

若手社員に技術を伝える

㈱愛工舎製作所

学びと知識

めぬま観光ガイドボランティア「阿うんの会」

めぬま観光ガイドボランティア「阿うんの会」は、県内初の国宝の建造物、熊谷市の妻沼聖天山しょうでんざん本殿「歓喜院聖天堂かんぎいんしょうでんどう」などを案内しています。

会員向け研修の講師も務める林芳明さん(71)は、ガイド一期生。聖天堂の「平成の大改修」を機に勉強を始めたと言います。

「定年前に関心を持って以来、学んでも学んでも興味は尽きない。学び続けて、ガイドの内容を深めるのがやりがい」

子供の頃は、聖天様が遊び場だったという舞原裕見子さん(66)は、学んで初めてその価値に気付いたと言います。

「会で知り合い、仲間が増えるのが楽しい。教え、教えられる関係は他にはない大切なもの」

会員は年会費を払ってガイドをしていますが、観光客からお金を受け取っていません。代表の増田哲也さん(71)です。

「ガイドは自分のためのボランティア。年間を通じて4、5人の班で分担し、活動している。ありがとうと言われるのが一番うれしい。もっと勉強して頑張ろうと思う」

1回のガイドは40分ほど。知識があふれ出る感じで、説明が尽きません。学んだことを人に伝えるのが本当に好きなんですね。

めぬま観光ガイドボランティア「阿うんの会」

聖天堂の前で観光客に分かりやすくガイド

めぬま観光ガイドボランティア「阿うんの会」

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